一生、夢中。

CAMERAS|FILM|キヤノン A-1

キヤノンA-1、5つのAE。

1978年、キヤノンが変えた一眼レフの操作思想。

SERIESキヤノン A-1 解体新書 VOL.1

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キヤノンA-1、5つのAE。

「5つのAE」。

1978年4月に発売されたキヤノン A-1のカタログが掲げた数え方で、ボディ83,000円、質量620gの黒い機械に、シャッター速度優先AE、絞り優先AE、プログラムAE、絞り込み実絞りAE、スピードライトAEの5つが並んでいた。

ところが露出に関わる操作子は、モード切替レバー、ATダイヤル、レンズの絞り環の3点しかなく、しかも5つのAEのうち、撮影者が自分の意思で切り替えられるのは3つだけである。残る2つは、絞り込み測光の操作や専用ストロボとの連動によって成立する経路で、さらにマニュアル露出はこの5つに入っていない。

カメラ屋のショーケース越しにこのカタログを読んで、数が合わないまま店を出た人は少なくないはずだ。数え直すと、A-1が何を自動化して何を人の手に残したのかが見えてくる。

※本記事にはアフィリエイト広告(プロモーション)を含みます。

3点の操作子で、5つを名乗る。

キヤノン A-1の天面で露出を動かすものはモード切替レバーとATダイヤルの2つだけで、レンズ側の絞り環を足しても合計3点にしかならないが、カタログが掲げたAEは5つある。操作子の数と数えられたAEの数が合っていないということは、数え方が操作に紐づいていないということでもある。

ATダイヤルはモードによって役割が変わる兼用ダイヤルで、シャッター速度優先の側に置けばシャッター速度を、絞り優先の側に置けば絞り値を設定するため、1つのダイヤルが2役を持つことで操作子を増やさずに2系統を回している。表示窓は1つしかないので、いま回しているのが秒数なのか絞り値なのかは、モード切替レバーの位置が決めていることになる。

確実に言えるのは、撮影者が意思を持って選べるAEがシャッター速度優先AE、絞り優先AE、プログラムAEの3つであり、残る2つがそこに並んでいない種類の経路だということである。通常のモード切替で扱えるこの3方式は5方式の60%にあたり、残る2方式は絞り込みレバーの操作や専用ストロボの使用を伴う。

撮影者が選ぶAE(Tv/Av/P)3種全体の60%装着物で決まるAE(絞り込み実絞り/スピードライト)2種全体の40%
5つのAE、誰が選んでいるか撮影者が切り替えで選ぶのは3経路。残る2経路は装着した機材で決まる。キヤノンカメラミュージアム A-1ページの記載をもとに分類

この40%の正体が、公式の記載順で4番目と5番目に置かれた絞り込み実絞りAEとスピードライトAEであり、選べる3つが先に来て通常のモード切替だけでは完結しない2つが後ろに付くという順番そのものが、分類の性格を示している。

通常のモード切替だけでは完結しないAEが2つある。

絞り込み実絞りAEは、FDレンズ以外のレンズやベローズ、リバースリングのように、絞り値の信号がボディへ伝わらない機材を付けたときに成立するもので、レンズの開口が実際に絞られた状態で測光し、ボディはシャッター速度だけを決めるため、露出の2変数のうち1変数がボディ側に残る形になる。

このとき撮影者がモード切替レバーを「絞り込み実絞りAE」に合わせるわけではなく、付けた結果そうなる。顕微鏡アダプターを噛ませても、FLレンズを付けても、同じ経路に落ちる。

スピードライトAEも性格は同じで、スピードライト155Aや199Aのような専用ストロボを装着するとシンクロ速度と絞りが自動で設定される経路に入るが、撮影者がダイヤルで「スピードライトAE」を呼び出す操作は、どこにもない。

199Aのガイドナンバーは30(ISO100・m)、155Aは17とされており、比にすると約1.76倍、到達距離の二乗で効く光量に直すと約3.1倍の差になるので、同じ「スピードライトAE」という一語の下で、届く距離が2倍近く違う機材が共存していたことになる。

キヤノン スピードライト155A17AE-1世代からの小型機キヤノン スピードライト199A30約1.76倍
スピードライト155Aと199Aのガイドナンバー同じ「スピードライトAE」という経路の下で、到達光量が約3.1倍違う機材が共存していた。ガイドナンバーはいずれもASA100・メートル。199Aはキヤノン AT-1 取扱説明書 p.61、155Aは英語版Wikipedia「Canon A-1」。

つまりキヤノンが5と数えたとき、並べる基準は「誰が選ぶか」ではなく「何が露出値を決めるか」に置かれており、撮影者が選ぶ3経路と機材が決める2経路を同じ列に並べられるのは、この基準だからである。1978年のカタログを読んだ高校生が数を合わせられなかったのは、読み手が「モードの数」だと思って数えたからで、書き手は最初から別のものを数えていた。

マニュアルは、なぜ5に入らないのか。

A-1はマニュアル露出ができるにもかかわらず、公式の数え方ではマニュアル露出は5つのAEの並びに入らず、別の機能として扱われている。Automatic Exposureの名の通り、露出値をボディが決める経路だけを数えているのだから、全部を人が決めるマニュアルは定義の外にあるというわけだ。

露出を決める変数はシャッター速度と絞りの2つしかなく、プログラムAEでは撮影者が決める露出変数はゼロ、シャッター速度優先AEと絞り優先AEでは1つ、マニュアル露出では2つになる。絞り込み実絞りAEは、絞りが物理的な開口として先に決まっているため、ボディが決めるのは1変数で、人が決めるのも1変数という配分になっている。

0・1・1・1・2。この並びで見ると、5つのAEは「人が決める変数を減らしていく順」に並んでいるのではなく、「ボディが決める変数が1つ以上ある状態」をすべて拾っているのだと分かる。1つでも自動で決まれば、それはAEなのである。

キヤノン A-1 プログラムAE0項目両方ボディが決めるキヤノン A-1 シャッター速度優先AE1項目絞りはボディキヤノン A-1 絞り優先AE1項目秒数はボディキヤノン A-1 絞り込み実絞りAE1項目絞りは実開口キヤノン A-1 マニュアル露出2項目AEには数えない
経路ごとに、撮影者が決める露出変数の数露出の変数はシャッター速度と絞りの2つ。1つでもボディが決めればAEに数えられている。

ただし自動化されたのは決定であって、選択ではない。A-1には露出補正が±2EVの範囲で用意され、これは−2から+2までの4段差、光量で16倍にあたる幅を人の側へ戻す仕掛けになっているし、さらにAEロックで自動で出た値をその場で固定できる。マニュアル露出も含めれば、自動化の上に残された手動操作は3種類あることになるが、この3つはどれも「5つのAE」には数えられていない。

数えられたのは入口の数で、数えられなかったのは出口に手を入れる方法だった、と考えればわかりやすい。カタログの5という数字は、A-1が何をやれるかの総量ではなく、露出値がどこから来るかの分類だったことになる。

数え方は、いまも割れている。

面白いのは、この数え方が現在の資料でも揃っていないことである。キヤノンカメラミュージアムはAEを5つ数えてマニュアル露出を別枠に置き、日本語Wikipediaはマニュアルを含めて6モードと数え、クラシックカメラを扱う個人サイトの休八写真館は5モードとしながらスピードライトAEを落としているので、同じ「5」でも中身が入れ替わっているわけだ。

キヤノンカメラミュージアム(AE5+マニュアル別枠)5種公式日本語Wikipedia(マニュアル含む)6種休八写真館(スピードライトAEなし)5種同じ5で中身違い
同じA-1を、資料は何種類に数えているか中身が入れ替わったまま、数だけが5・6・5と並んでいる。各資料の記載による

3通りの数え方があるという事実は、A-1の仕様が曖昧だったことを意味しない。むしろ、カタログの数え方が「操作の種類」ではなかったために、読み手が自分の基準で数え直すと別の数になる、という構造の帰結である。撮影者の立場で数えれば6(選べる3つ+マニュアル+装着で入る2つ)、ダイヤルで切り替えるものだけ数えれば3、露出が決まる経路で数えれば5になる。

発売時の標準レンズは、FD 55mm F1.2 S.S.C.とFD 50mm F1.4 S.S.C.のどちらも銀の絞り環を持つ旧FDで、New FDが並ぶのは1979年6月——A-1より1年あとになる。S.S.C.はスーパースペクトラコーティングの略で、レンズ前枠の刻印で見分けられる。

キヤノン FDマウント採用1971年 F-1とともに登場キヤノン AE-1 発売1976年 Aシリーズの先頭キヤノン AT-1 発売1977年 マニュアル露出専用機キヤノン A-1 発売1978年4月 標準レンズは旧FDキヤノン New FDレンズ登場1979年 A-1より後キヤノン AV-1 発売1979年 絞り優先AE専用機
A-1とNew FDの前後関係発売時の標準レンズをNew FDと記す資料があるが、New FDの登場はA-1の翌年にあたる。キヤノンカメラミュージアムの記載による

中古で買うとき、この1年の差は実物で確かめられる。旧FDは銀色のリングを回して固定する方式、New FDは本体ごと回すバヨネット式なので、手が触れた瞬間に違いが分かる。A-1に当時の組み合わせを再現したいなら、探すのは銀枠のほうだ。

5つを、1つの窓で見せる。

A-1のファインダーを覗くと、下部に赤い数字が並ぶ。7セグメントの赤色LEDでシャッター速度と絞り値の2項目を同時に数字で表示する方式が採られており、それまでの一眼レフが持っていた指針式の露出計とは、情報の性質そのものが違っていた。

指針が示していたのは連続量で、針がどれくらい振れているかで「適正からどれだけ外れているか」が読めたし、針の動きの速さからは、光が変わっていく方向まで見えた。対して7セグメントLEDが表示できるのは0から9の数字という離散した値にすぎず、絞り表示は1/2段刻みとされるので中間値も読めるものの、針の持っていた連続性は失われている。

その代わりに得たのが、暗所での可読性と、2つの値を同時に出せることだった。赤く光る数字は、針が見えなくなる明るさでも読める。A-1はシャッター速度を30秒から1/1000秒まで電子制御し、この範囲を1段刻みで数えると15段ぶんになるが、30秒という長秒時を指針で表示する手立ては、そもそも無い。

測光素子はSPC(シリコンフォトセル)で、受けた光を電気信号として取り出し、そのまま演算へ渡せる構成になっているため、シャッター速度と絞りの双方をボディが決めるプログラムAEも、測光値を数値として演算してから両方へ配分する処理として組める。

電源は4LR44/4SR44の6Vとされる。機械式機がボタン電池1.5Vで露出計だけを動かしていたのに対し、A-1は電磁レリーズを含む全体が電気で動くので、電池が切れればシャッターすら切れない。5つのAEは、6Vの上に乗っていた。

0、1、1、5。

1976年に発売されたキヤノン AE-1は、のちに未来技術遺産へ登録された機種だが、搭載するAEはシャッター速度優先AEの1方式だけで、5経路のA-1との差は4経路になる。

キヤノンカメラミュージアムの製品番号で見ると、AE-1がfilm093、A-1がfilm100で、7番あとに置かれている。あいだの1977年には、AEを1つも持たない追針式のマニュアル露出専用機、キヤノン AT-1が入り、1979年には絞り優先AE専用のキヤノン AV-1が加わった。AT-1が0、AV-1が1、AE-1が1、A-1が5と、同じAシリーズの中でAE経路の数だけが0から5まで分布している。

キヤノン AT-1(1977年)0種追針式マニュアル専用キヤノン AV-1(1979年)1種絞り優先AEのみキヤノン AE-1(1976年)1種シャッター速度優先AEのみキヤノン A-1(1978年)5種公式の数え方
Aシリーズ4機種のAE経路数同じ共通部品構成の上に、0から5まで分布している。機種を分けたのは経路の数だった。キヤノンカメラミュージアム各製品ページによる

背景には、Aシリーズで部品を共用しながら各機を仕立てる作り方があったと考えられる。重量はAE-1が590g、A-1が620gで差は30gしかなく、4経路増えて30g、1経路あたり7.5gという計算になるが、これは数字の並べ方であって、増えた質量の中身が経路に対応していると言えるわけではない。

価格はAE-1が発売時81,000円、A-1が83,000円とされ、差額は2,000円。ただしAE-1の価格表記はボディ単体か標準レンズ付きかが資料で揺れているうえ、発売年も2年違うので、同じ条件で並べた差額ではない。それでも、同じシリーズの中で上位機が2,000円程度の差に見える価格に置かれていたことは、Aシリーズの作り方を物語っている。

キヤノン AE-1(1976年)590gAE1経路キヤノン A-1(1978年)620gAE5経路、差30g
AE-1とA-1の重量差AE経路は1つから5つへ増えたが、重量の差は30g。増加分は主に制御側で吸収されている。キヤノンカメラミュージアム(A-1はfilm100、AE-1はfilm93)。

外から見て分かる差もあり、AE-1はシルバーとブラックの2色が設定されたのに対し、A-1はブラックのみの1色で、色による価格差が存在しない。色の選択肢がないこと自体が、AE-1との位置づけの差を示していたとも読める。

巻上系でも階層は分かれていて、AE-1世代のパワーワインダーAが約2コマ/秒だったのに対し、A-1用のモータードライブMAは最高5コマ/秒とされ、2.5倍にあたる。36枚撮りのフィルムを5コマ/秒で流せば7.2秒で終わる計算になるが、この5コマ/秒はバッテリーパックMAなどの電源条件を満たしたうえでの最高速で、1本を7秒で巻き切るための装備がどういう性格のものだったかは、この数字だけで伝わる。

キヤノン パワーワインダーA(AE-1用)2約2コマ/秒キヤノン モータードライブMA(A-1用)52.5倍
巻上ユニットのコマ速5コマ/秒なら36枚撮り1本が7.2秒で終わる。上位機の位置づけが、ここに出ている。モータードライブMAはキヤノンカメラミュージアム(film100)。ワインダーAは英語版Wikipedia「Canon AE-1」。

ただし、最上位機といってもプロ機ではない。1971年3月発売のキヤノン F-1はファインダー本体もフォーカシングスクリーンも交換でき、視野率97%・倍率0.77倍を確保していたが、A-1のスクリーンは固定で、視野率は93.4%にとどまる。A-1が立っていたのは、F-1の下にある普及価格帯の頂点だった。

使わない目盛りまで、刻んである。

1978年は昭和53年にあたり、この年に21歳だった人は1957年生まれ、2歳だった人は1976年生まれだから、DUADの読者層はちょうどこの幅に収まる。上の世代は大学生や新社会人としてショーケース越しにA-1を見ており、下の世代は父や兄の持ち物として記憶しているはずだ。

ボディ83,000円という値付けはAシリーズの中では最上位にあたり、月給や初任給と並べて「何か月分」と言いたくなるところだが、A-1の値段の重さは別のところにある。FD 50mm F1.4 S.S.C.のような標準レンズを足し、フィルムを買い、現像とプリントに出す——この一式が83,000円の外側に積み上がっていく構造のほうが、当時の重さを正確に表している。

キヤノン A-1 主要諸元
発売1978年4月キヤノンカメラミュージアム
ボディ価格(発売時)83,000円ボディ単体
本体重量620gボディのみ
幅141mm
高さ92mm
奥行48mm
画面サイズ(長辺)135フィルム
画面サイズ(短辺)135フィルム
最長シャッター速度30秒電子制御
最短シャッター速度(分母)1,000分の1秒電子制御
シャッター速度の段数15段1段刻み換算
シンクロ速度(分母)60分の1秒199A/155A装着時
公式に数えたAE5種マニュアルは別枠
露出に関わる操作子3点レバー・ATダイヤル・絞り環
露出補正範囲(±)2EV
フィルム感度下限6ASA1/3段刻み
フィルム感度上限12,800ASA1/3段刻み
ファインダー視野率93.4%
ファインダー倍率0.83倍50mm・無限遠
ファインダー内表示項目2項目秒数と絞り値
電源電圧6V4LR44/4SR44
セルフタイマー(短)2秒
セルフタイマー(長)10秒
ボディ色数1色ブラックのみ
生産期間7年1978〜1985年
キヤノン A-1 主要諸元1978年4月発売時の公称値。キヤノンカメラミュージアム(film100)。シンクロ速度はキヤノン AT-1 取扱説明書 p.61、生産終了年は日本語版Wikipedia。

アクセサリーの系も厚く、データバックAが日付を画面内に写し込み、モータードライブMAが電動巻上を担い、スピードライト155Aと199Aが自動調光に対応した。A-1を中心にした一式を揃えるという前提が、カタログの構成そのものに組み込まれていたというわけだ。

フィルム感度の設定範囲はASA6〜12800とされ、段数にすると約11段ぶんになるが、実際に流通していた一般用フィルムの感度はこの幅の一部に偏っていたので、上下の端は実用域を外れたまま残された。使われない範囲まで目盛りを刻むのは、電子制御で数値を扱うようになった機械の性格で、機械式のダイヤルなら刻まなかったはずの数字がそこに並んでいた。

生産は1978年から1985年まで、およそ7年続いたとされ、発売から2年後の1980年6月1日付けのカタログが現存していることからも、長く売られた機種であることがうかがえる。FDマウント最後の最上位機であるキヤノン T90の登場は1986年で、A-1の生産が終わった翌年にあたる。

キヤノン A-1 発売1978年4月 ボディ83,000円現存が確認できるカタログ1980年6月1日配布キヤノン A-1 生産終了1985年 約7年の製品寿命キヤノン T90 発売1986年 FDマウント最後の最上位機
A-1が売られていた期間発売から7年。FDマウント最後の最上位機T90が出るまで、8年の間がある。生産期間はPhotoethnography、カタログは販売資料による

3つは今日、2つは機材を待つ。

1978年4月の発売から48年が経過しており、メーカー修理はすでに終了しているため、いま面倒を見てくれるのは専門の修理業者になる。

Aシリーズに共通して知られる症状が、通称「シャッター鳴き」である。巻き上げてシャッターを切るとミラー駆動部からキュルキュルという異音が出るもので、原因は駆動部の潤滑切れとされ、音が出ている個体でも写ること自体はあるが、修理業者は注油で対処している。中古のショーケースで空シャッターを切らせてもらえるなら、聞くべき音はこれだ。

電池も最初の関門になる。4LR44/4SR44の6Vが要り、電池が無ければ電磁レリーズが働かないのでシャッターすら切れないが、「動作未確認」として安く出ている個体には電池が入っていないものもあるので、店頭で電池を入れて確認させてもらえるかは聞く価値がある。

中古相場は並品で15,000〜40,000円あたりが目安とされるものの、動作品かどうかで開きが大きく確定した値ではないため、実際の相場は購入前に複数の店で見比べるほかない。

買ったあとにやることは決まっていて、36枚撮りを1本入れ、シャッター速度優先AE、絞り優先AE、プログラムAEの3つを順に試し、残る2経路は専用ストロボか、絞り値信号の伝わらないレンズを用意したときに回す。±2EVの露出補正とAEロックは、どの経路でも最後に効く。

48年前に数えられた5という数字が、手の中で3つの操作子に収まっていく過程を実際に確かめられるので、カタログの前で数が合わなかったあの感覚は、実機を触れば数分で解ける。

「カメラロボット」という広告の衝撃。

A-1に付けられた呼び名は「カメラロボット」。電子制御という中身を誰でも想像できる一語に置き換えた呼称で、カメラが撮影者の代わりに判断するという関係の新しさが、ここに収まっている。

ただしこの言葉を5つのAEへ戻してみると、頭脳が何でも決めたわけではないことが分かる。撮影者がシャッター速度を優先するのか、絞りを優先するのか、それとも両方を任せるのか——決める仕事の分担を選ぶのは依然として人間であり、自動化の価値は操作をゼロにすることではなく、撮影者が決めるべきことを選び直せる点にあった。

5つのAEが示したもの。

キヤノン A-1が掲げた「5つのAE」は、通常のモード切替で選ぶ数だけを指しているわけではない。撮影者がモード切替レバーとATダイヤルで選べるのはシャッター速度優先AE、絞り優先AE、プログラムAEの3つで、絞り込み実絞りAEとスピードライトAEは、絞り値信号の伝わらないレンズや専用ストロボを付けた結果そうなる経路である。並べる基準が「誰が選ぶか」ではなく「何が露出値を決めるか」に置かれているから、この5つを同じ列に置ける。マニュアル露出が数に入らないのも同じ理由で、ボディが決める変数がゼロだからにすぎない。自動化されたのは露出値の決定であって、±2EVの露出補正とAEロックとマニュアル露出という3つの手動操作は、5の外側に残された。中古を手にするなら、見るのは3点の操作子と、空シャッターの音と、4LR44が入っているかどうか。それだけで、1978年のカタログの数え方は検算できる。

A-1の5つのAEを数え直すと、通常操作で選べる3つと、機材・測光条件によって成立する2つに分かれる。マニュアル露出を除外したのは、撮影者の自由を否定したからではない。自動露出という言葉の定義に従った結果だった。1978年、「カメラが頭脳を持った」と語られた時代の核心は、カメラがすべてを奪うことではなく、人間と機械が露出の決定を分け合うことにあった。

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この記事の夢中ポイント

  • 公式の記載順に注目すると面白い。シャッター速度優先AEが1番目、絞り込み実絞りAEが4番目、スピードライトAEが5番目。選べる3つが前、機材で決まる2つが後ろという並びが、そのまま分類の基準を示している。
  • 撮影者が決める露出変数の数を数え直すと、プログラムAEが0、シャッター速度優先AEと絞り優先AEが1、マニュアル露出が2になる。1つでもボディが決めればAE、という線引きが見えてくる。
  • AE-1の590gとA-1の620g、その差30g。AE経路は1つから5つへ増えているのに、増えた質量はこれだけである。経路の増加がどこで吸収されたかを考える手がかりになる。
  • 数え方が資料で3通りに割れている。公式はAE5+マニュアル別枠、日本語Wikipediaは6、休八写真館は5でスピードライトAEが落ちる。同じ機種を、誰の立場で数えるかで数が変わる。

最終更新 2026年11月6日

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この記事を読んで気になったものを、編集部の視点で選びました。

読む

  • 日本カメラ博物館『日本のカメラ100年』図録

    1970年代後半の国産一眼レフが、どの価格帯に何機種並んでいたかを一覧で確認できる。

    発行元: 日本カメラ博物館(JCII)・形態: 展示図録・入手: 博物館販売および古書流通

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  • 写真工業 1978年 バックナンバー

    A-1発売当時の技術誌で、AE経路の解説が当時の用語のまま載っている。

    発行: 1978年・判型: A5前後・入手: 古書流通のみ・価格: 出品により変動(2026年11月1日時点)

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  • アサヒカメラ 1978年 バックナンバー

    発売直後のテスト記事とキヤノンの広告が同じ号に収まっている。

    発行: 1978年・発行元: 朝日新聞社・入手: 古書流通のみ・価格: 出品により変動(2026年11月1日時点)

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  • クラシックカメラ専科 キヤノン特集

    FDマウント期のキヤノン一眼レフを系譜として追えるため、A-1の位置づけを自分で確かめられる。

    発行元: 朝日ソノラマ・判型: B5・入手: 古書流通中心・価格: 出品により変動(2026年11月1日時点)

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  • キヤノンの軌跡/カメラ年代記(カメラ関連ムック)

    FDマウントからEFへの移行を含め、A-1が置かれた時代の全体像をたどれる。

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  • 赤城耕一『名機を語る』系のクラシックカメラ論(書籍)

    A-1を実際に使い続けている書き手の視点。本記事とは別の角度から同じ機種を読める。

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電子で読む

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作る・使う

  • 4LR44 6V アルカリ電池(カメラ用)

    A-1は電磁レリーズのため、この電池が無いとシャッターが動かない。

    電圧: 6V・型番: 4LR44(銀電池は4SR44)・用途: キヤノンAシリーズほか・価格: 1個数百円台(2026年11月1日時点)

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    口径: 52mm・種別: 保護用クリアフィルター・メーカー: ケンコー・トキナー

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  • 富士フイルム 135フィルム 36枚撮り

    5つのAEを1本で試すなら、36枚撮りが枚数の基準になる。

    規格: 135(35mm判)・撮影枚数: 36枚・画面サイズ: 24×36mm・価格: 銘柄により変動(2026年11月1日時点)

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  • キヤノン 4LR44 互換電池(6V アルカリ)

    A-1は電子制御シャッターのため、電池が無ければシャッターすら切れない。入手して最初に要るもの。

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着る・持つ

  • カメラ用ハンドストラップ/革ケース(Aシリーズ対応)

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参考資料・出典

本記事は、メーカー公式資料、公的統計・資料、当時のカタログ、専門媒体等を参照し、DUAD編集部が内容を確認・構成しています。ここに挙げるのは、本文の数値・年月日の根拠として実際に使った資料です。

百科事典・個人の記録4

事実に辿り着く入口として参照したもの。数値や年月日の根拠は、できるかぎり上の資料で取り直しています。

最終閲覧日:2025年1月20日

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