38mmは、35mmでも40mmでもない。
焦点距離38mm。35mm判フィルムの画面サイズは24×36mmで、対角線の長さは約43.27mmだから、焦点距離38mmを画面対角で割ると0.878になる。焦点距離が画面対角に近いレンズを標準レンズとする考え方に従えば、38mmは標準より少し広角側に位置する。
対角画角は約59.3度で、一般的な50mmレンズの約46.8度と、35mmレンズの約63.4度のあいだにある。ただし35mmとの差は約4度しかない。
数字の上では近いが、画面の中に何を入れるかという点では、この違いが効いてくる。35mmは人物とその周囲の空間を一緒に写しやすく、50mmは視野をもう少し絞って被写体に向き合う。38mmは、ちょうどその中間にあたる画角になる。
T2が登場した1990年には、35mmや38mmの単焦点レンズを搭載したコンパクトカメラはすでに存在していた。したがって、38mmという数字そのものが特別な発明だったわけではない。注目したいのは、その38mmにF2.8という開放絞りを組み合わせ、カール・ツァイスのゾナーという名前を与えたことだ。
1993年のニコン 35Tiは35mm F2.8、1996年のミノルタ TC-1は28mm F3.5、同年のリコー GR1は28mm F2.8を採用した。後続の高級コンパクトカメラには、35mmや28mmという、より広い画角を選ぶ機種が目立つ。2001年のCONTAX T3も35mm F2.8になった。T2の38mmは、後継機には引き継がれなかったのである。
このレンズの使い方を決めるもうひとつの数字が、最短撮影距離の0.7mである。38mmで0.7mまで近づいても、写る範囲はおよそ縦40cm、横60cm。小さな時計やアクセサリーを画面いっぱいに写すことはできない。
一方で、人物を周囲の空間と一緒に撮るには扱いやすい。T2の38mmは、遠くの風景だけでも、目の前の小物だけでもなく、人とその周囲に向けられた画角だったと考えられる。
電源を入れると、レンズカバーが開く。
T2の電源操作は、初代CONTAX Tとは異なる。初代Tが前面のスライドカバーを手で開く構造だったのに対して、T2ではその操作が無い。
T2では、ボディ上面のフォーカスダイヤルが電源スイッチを兼ねている。OFFの位置からAF側へ回すと電源が入り、前面のレンズカバーが自動で開く。続いて鏡胴が撮影位置まで繰り出され、OFFへ戻せば鏡胴が収納されてレンズカバーも閉じる。
撮影者が前面のカバーを指で動かす必要はない。レンズキャップを取り外す操作もなく、カメラを使うときだけレンズが外へ出る。
この機構には、持ち歩くカメラとしての利点がある。レンズを使わないときには前玉を保護でき、撮影時には決まった位置まで鏡胴を繰り出せる。収納状態ではボディの出っ張りを抑えることもできる。
| 発売年 | 1990年 | 国内資料は1990年12月1日 |
|---|---|---|
| 発売時定価(チタンシルバー) | 120,000円 | |
| 幅 | 119mm | |
| 高さ | 66mm | |
| 奥行き | 33mm | バリア閉時 |
| 質量 | 295g | 電池別 |
| 焦点距離 | 38mm | |
| レンズ群数 | 4群 | |
| レンズ枚数 | 5枚 | |
| 開放F値 | 2.8F | |
| 最小絞り | 16F | |
| 絞り羽根枚数 | 7枚 | |
| 絞り設定点 | 6点 | 5段分 |
| 最短撮影距離 | 0.7m | AF・MF共通 |
| シャッター最低速 | 1秒 | |
| シャッター最高速 | 500分の1秒 | レンズシャッター |
| シャッター段数 | 9段 | |
| 露出モード数 | 2種 | 絞り優先AE/プログラムAE |
| 露出補正範囲(±) | 2EV | 0.5EV刻み |
| 露出補正設定点 | 9点 | |
| ファインダー視野率 | 85% | |
| ファインダー倍率 | 0.6倍 | 約 |
| 画面サイズ(幅) | 36mm | |
| 画面サイズ(高さ) | 24mm | |
| フィルム規格 | 35mm判 | |
| 電池電圧 | 3V | CR123A |
| 電池本数 | 1本 | |
| 三脚ねじ | 0.25インチ | 1/4インチ |
T2の外形寸法は119×66×33mm。奥行き33mmという数字は、電源を切り、鏡胴を収納した状態の寸法である。
ただし、焦点距離38mmがボディ厚33mmより長いから沈胴機構が必要だった、という説明は正確ではない。焦点距離はレンズの主点と像面の光学的な関係を示す数値で、レンズそのものの物理的な長さではない。T2では光学設計と鏡胴の収納機構を組み合わせることで、使用時のレンズ位置と携帯時のボディ寸法を両立させている。
電源を入れるとレンズが出る。いまでは珍しくない動作だが、T2ではその動きが、金属製の小さなボディに収められていた。
テッサーをやめて、4群5枚になった。
T2のレンズは、カール・ツァイス ゾナー T* 38mm F2.8。構成は4群5枚で、5枚のガラスを4つのまとまりに分けている。
ゾナーという名称の歴史は古い。1929年、カール・ツァイスのルートヴィヒ・ベルテレが設計したゾナーは、レンズの貼り合わせを利用して空気とガラスの境界面を減らし、反射による光量損失やコントラスト低下を抑える構成として発展した。当時は、現在のような高性能な多層膜コーティングが存在しなかった。そのため、ガラスと空気が接する面の数を減らすことには大きな意味があった。
5枚のレンズをすべて独立した5群にすれば、空気と接する面は10面になる。一方、5枚を4群にまとめれば8面になるので、貼り合わせによって空気と接する面を2面減らせる計算だ。ただし、これは群数と枚数から見た単純な比較であり、実際の反射特性はガラスの屈折率、曲率、貼り合わせ面、コーティングによって変わる。
T2の4群5枚は、初期の古典的なゾナーと同じ構成ではない。初代CONTAX Tの開発に関する資料では、当初テッサー型も検討されたが、画面周辺の描写などを考慮して別の構成が選ばれた経緯が紹介されている。テッサーは一般に3群4枚で構成され、比較的少ないレンズ枚数で良好な描写を得られる形式として知られる。
しかし、コンパクトカメラ用のレンズには、中心部の解像力だけでなく、画面周辺の描写、歪曲収差、レンズ全長、鏡胴の収納寸法など、複数の条件がある。T2のゾナーは、そうした条件を満たすための光学系だった。
初代TとT2は、どちらも38mm F2.8、4群5枚という基本仕様を持つ。ただし、この数字が同じだからといって、両者の光学系が完全に同一設計だったとは断定できない。T2について確実に言えるのは、38mm F2.8の4群5枚レンズを採用し、それをカール・ツァイス ゾナー T*として製品化したということである。
レンズの名前は古いが、1990年のT2に収められた光学系は、その時代のコンパクトカメラに合わせたものだった。
T*は、単層ではない。
ゾナーの後ろに付くT*。この小さな記号にも、カール・ツァイスの技術史が畳まれている。
レンズの表面では、光の一部が反射する。反射した光がレンズ内部で繰り返し反射すると、ゴーストやフレアの原因になり、画面全体のコントラストを低下させることもある。これを抑えるのが、反射防止コーティングである。
カール・ツァイスでは、1930年代にアレクサンダー・スマクラによる反射防止膜の技術が実用化された。単層の反射防止膜を示すTという表記は、ドイツ語のTransparenzに由来する。その後、複数の膜を重ねる多層膜コーティングへ発展し、T*という表記が使われるようになった。
TとTは同じ意味ではない。T2のレンズに刻まれたTは、多層膜コーティングを示している。多層膜は、異なる波長の光に対して反射を抑えるため、複数の層の厚さや屈折率を組み合わせる技術である。反射を完全にゼロにするものではないが、コーティングの無いレンズや単層膜に比べ、広い波長域で反射を低減できる。
T2のレンズは4群5枚で、空気と接するレンズ面は8面ある。光はそれらの面を通ってフィルムに届く。各面の反射を減らすことは、透過光量だけでなく、画面内の不要な光を抑えることにもつながる。
T2が発売された1990年には、多層膜コーティングはすでに珍しい技術ではなかった。それでも、カール・ツァイスのT*という記号は、長く積み重ねられてきた光学技術を示すものだった。38mm F2.8。小さな前玉の周囲に刻まれたその名前には、レンズ構成とコーティングの両方が含まれている。
チタンは、4面のカバーに使われた。
T2の質量は295g。金属製のコンパクトカメラとして、極端に軽いわけではない。しかし、その外装には当時としては特徴的な材料が使われていた。チタンである。
京セラは、T2の外装にチタンカバーを採用したことを製品の特徴として打ち出した。チタンの密度は約4.51g/cm³で、黄銅の約8.5g/cm³と比較するとおよそ53%にあたる。一方、アルミニウムの約2.70g/cm³よりは重い。同じ体積なら黄銅より軽いが、アルミニウムより重い材料である。
ただし、カメラ全体の質量は外装だけで決まらない。レンズ、シャッター、モーター、電子回路、ファインダー、フィルム給送機構など、多数の部品が内部に収められている。したがって、チタンの密度だけから295gという質量の理由を説明することはできない。
TIPS
チタンは、4面のカバーに。
上・前・底・背の4面にチタンカバー。京セラは「コンパクトカメラとしては初めてボディにチタンカバーを採用」と書いている。資料に残っているのは、材料の呼び名が「チタンカバー」だというところまで。
T2で重要なのは、チタンがカメラ全体を構成しているわけではなく、外装カバーとして採用されたことだ。使われたのは上・前・底・背の4面で、内部の構造材まで同じ材料になっているわけではない。初代CONTAX Tの開発では、ポルシェ・デザイングループがチタン外装を求めたものの、成形や表面仕上げの問題から採用に至らなかったという経緯が伝えられている。初代Tでは、アルミニウム系の合金が外装に使われた。
それから約6年を経て、T2ではチタンが製品の外装として実現した。チタンは耐食性に優れる一方、加工や表面処理には独特の難しさがある。金属を薄い板に加工し、曲面や角を持つカバーへ成形し、さらに均一な表面に仕上げる。その工程は、単純に材料を置き換えるだけでは済まない。
T2では、このチタン外装が後のカラーバリエーションや限定モデルにもつながった。標準のチタンシルバーから、チタンブラック、チタンゴールド、そして記念モデルへ。同じ基本構造を持つカメラが、表面仕上げによって異なる商品になっていく。1990年のT2にとって、チタンは軽量化だけを目的とした材料ではなく、製品の外観を特徴づける存在でもあった。
サファイアと、セラミックの圧板。
T2には、チタン以外にもサファイアとセラミックという特徴的な材料が使われている。
サファイアは、酸化アルミニウムの結晶からなる材料で、硬度が高く、傷が付きにくい性質を持つ。T2ではファインダーの保護ガラスやレリーズボタンにサファイア系の材料が採用された。ファインダーは撮影のたびに顔を近づける部分であり、レリーズボタンは指が直接触れる操作部品である。日常的に使う場所へ、硬度の高い材料が置かれている。
もうひとつが、フィルムの圧板である。35mmフィルムは、カメラ内部で一定の位置に保持されなければならない。レンズが結ぶ像面とフィルムの位置がずれれば、ピントの精度に影響する。圧板はフィルムを適切な位置に保つための部品で、T2ではここにセラミックが使われた。
京セラは、ファインセラミックスの技術を基盤に成長した企業である。カメラ事業ではCONTAXやヤシカというブランドを展開していたが、材料技術という点では、京セラ自身が蓄積してきた分野とつながっていた。
チタンは外から見える。サファイアも、ボタンやファインダーを見れば存在を確かめられる。しかし、フィルム圧板は裏ぶたを開けなければ見えない。写真を撮るときには意識されない部品にまで、材料の選択が及んでいる。T2の120,000円という価格を考えるとき、レンズや外装だけではなく、こうした内部部品も見ておきたい。
F2.8だけ、ふるまいが変わる。
T2のレンズの周囲には、絞りダイヤルがある。刻まれている数字はF2.8からF16までで、設定点はF2.8、F4、F5.6、F8、F11、F16の6つ。一般的な一眼レフ用レンズと同じように、撮影者が絞りを選べる。
しかし、T2の絞りダイヤルは、単純な絞り優先AEだけではない。F4からF16までの設定では、絞り優先AEとして動作する。撮影者が絞りを決め、カメラが被写体の明るさに応じてシャッター速度を選ぶ。
変わるのはF2.8に設定したときだ。F2.8では約1/200秒、ISO100でEV10.6までが絞り優先AEとして動作する範囲になる。それより明るくなると、プログラムAEへ切り替わる。つまり、撮影者がF2.8を選んでいても、カメラが必要と判断すれば絞りを変える。開放F2.8は、常に維持されるわけではない。
この仕様は、T2のシャッター機構と関係している。T2のシャッターはレンズシャッター方式で、プログラムAE時の最高速度は1/500秒。ただし、絞り優先AEでは、設定した絞りによって利用できる最高速度が異なる。
| F2.8 | 200分の1秒 | ここを超えるとプログラムAEへ |
|---|---|---|
| F4 | 180分の1秒 | |
| F5.6 | 160分の1秒 | |
| F8 | 140分の1秒 | |
| F11 | 120分の1秒 | |
| F16 | 100分の1秒 | |
レンズシャッターは、シャッター羽根の開閉と絞りの動作が機構的に関係する。そのため、絞りの設定によって高速側の動作条件が変わる。T2ではF2.8の設定時にプログラムAEを組み合わせることで、明るい場面にも対応している。
ISO100でF2.8・1/200秒の露出は、EV約10.6に相当する。この明るさを超えると、T2はF2.8を維持することよりも、適正露出を得ることを優先する。
TIPS
F2.8でも、必ずF2.8ではない。
T2はF2.8に設定すると、明るい場面でプログラムAEへ切り替わる。開放絞りで背景をぼかしたい場合でも、カメラが自動で絞ることがある。ファインダー内のプログラム表示を確認すれば、切り替わりを知ることができる。
ここが重要だ。T2は絞りを選べるカメラだが、すべての場面でその絞りを固定できるわけではない。開放のF2.8だけは、撮影者の指定より自動制御が優先される領域を持っている。
その一方で、露出補正は±2EV、0.5EV刻みで設定できる。撮影者が明るさを調整する余地は残されている。手動操作と自動制御、その境界に置かれた部品が、T2の絞りダイヤルなのである。
赤外線を当てて、距離を決める。
T2のオートフォーカスは、赤外アクティブ方式である。カメラから赤外線を投射し、被写体から戻ってきた光を利用して距離を測る。現在のデジタルカメラで一般的な像面位相差AFやコントラストAFとは、基本的な仕組みが異なる。
赤外アクティブ方式の利点は、被写体が暗くても距離を測れることだ。カメラ自身が測距用の光を出すため、周囲の明るさだけに依存しない。夜間や室内など、光量の少ない場所で有利になる。
TIPS
赤外AFは、ガラス越しが苦手。
赤外アクティブAFは、暗い場所でも測距できる一方、窓ガラスなどの反射に影響される場合がある。ガラス越しの被写体にピントが合わないときは、マニュアルフォーカスで距離を設定する方法がある。
ただし、弱点もある。赤外線が手前のガラスなどで反射すると、カメラが意図した被写体までの距離を正しく測れない場合がある。列車の窓越しや水槽越しの撮影が、その例だ。また、反射しにくい被写体や特殊な表面を持つ被写体でも、測距が不安定になる可能性がある。
T2には、こうした場面に対応するためのマニュアルフォーカスが用意されている。ボディ上面のフォーカスダイヤルを操作すれば、撮影者が距離を指定できる。初代CONTAX Tでは、距離計を使って手動でピントを合わせていた。T2ではオートフォーカスが標準となったが、距離を手動で決める機能は残された。
この選択は、T2の性格をよく表している。自動化によって操作を減らしながら、それがうまく働かない場面では撮影者が操作を引き受けられる。すべてをカメラ任せにするのではなく、必要な操作を残している。
ファインダーには、写らない余白がある。
T2のファインダー倍率は約0.6倍、視野率は約85%である。一眼レフのように撮影レンズを通った像を見る方式ではなく、撮影レンズとは別の光学系で被写体を確認する。そのため、ファインダーで見える範囲と、フィルムに記録される範囲には差がある。
視野率85%という数字は、ファインダーで確認できる範囲が実際の撮影範囲より狭いことを示す。仮に縦横それぞれ85%という意味で扱えば、面積比は0.85×0.85で約72%となる。ただし、ファインダー視野率の公称値をそのまま面積比へ換算するには、メーカーがどのように視野率を定義しているかを確認する必要がある。確実なのは、T2ではファインダーで見た範囲より広い範囲がフィルムに写るということだ。
もうひとつの問題が、パララックスである。撮影レンズとファインダーは別の位置にあるため、近距離では両者が見ている範囲にずれが生じる。T2では、ファインダー内に近距離撮影用のフレームが用意されている。近くの被写体を撮影するときには、その表示を目安に構図を決める。
ファインダーには、撮影範囲だけでなく、ピントの状態やシャッター速度などの情報も表示される。測光は、撮影レンズとは別に設けられた受光素子による外部測光方式。測光範囲はISO100でEV3〜17。
フィルム感度はDXコードから自動で読み取り、ISO25〜5000に対応する。DXコードを持たないフィルムではISO100として扱われる。
フィルムを入れてシャッターを押せば写真は撮れる。しかし、ファインダーの中には、撮影者が判断するための情報も残されている。T2は、単に覗いて押すだけのカメラではない。
CR123A一本で、フィルム25本。
T2の電源は、3Vのリチウム電池1本。CR123AまたはDL123Aを1本入れ、これでシャッター、オートフォーカス、フィルム給送、ストロボまでを動かす。
フィルムを装填するときは、裏ぶたを開け、パトローネを入れ、フィルムの先端を指定位置まで引き出す。裏ぶたを閉めると、自動的に1コマ目まで送られる。撮影後の巻き上げもモーターが行い、最後まで撮影すると自動で巻き戻す。途中でフィルムを巻き戻す機能もある。
初代Tの時代には、手でフィルムを巻き上げる操作が残っていた。T2では、その操作がなくなった。撮影者が行うのは、フィルムの装填、構図の決定、必要に応じた絞りや距離の設定、そしてシャッターを押すことだ。
電池寿命について、京セラの公称値は24枚撮りフィルムで約25本。ただし、これは撮影の50%でストロボを使用し、常温で新品の電池を使った場合の目安である。25本という数字だけが独立して保証されているわけではない。
TIPS
25本は、電池寿命の目安。
CR123A一本で約25本という数値は、24枚撮りフィルムを使用し、撮影の50%でストロボを発光させた常温での公称値。低温環境や電池の状態によって撮影可能本数は変わる。
内蔵ストロボの充電時間は、新品電池・常温で約3.5秒。ISO100での到達距離は、およそ0.7〜3mとされる。セルフタイマーは電子式の10秒。
レンズや外装に注目すると特別なカメラに見えるT2だが、フィルムの装填から巻き戻しまでの操作は、当時の一般的な全自動コンパクトカメラに近い。高級なレンズを使うために、特別な手順を覚える必要はない。ここにも、T2の特徴がある。
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防湿庫から出した1台を、まず動かす。
35年前の機械である。電池を入れる前に見ておく場所があり、しまい方しだいで次の10年が変わる。
T2の駆動電源。3Vのリチウム一次電池を1本使用する。長期間使用していない個体では、電池室の接点や腐食の有無を確認してから装着したい。
パナソニック CR123A リチウム電池
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T2はDXコードからフィルム感度を自動設定する。ISO100やISO400の市販フィルムは、日常の撮影で使いやすい選択肢となる。
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レンズ前面やボディ表面の埃を取り除くための道具。鏡胴の隙間に器具を差し込んだり、可動部へ液剤を注入したりすることは避けたい。
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フィルムカメラの長期保管では、湿気やカビへの対策が重要になる。保管環境を安定させるための機材。
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初代Tは、手でピントを合わせた。
T2の前には、1984年に発売された初代CONTAX Tがあった。同じゾナー T* 38mm F2.8を積んだ、35mm判のコンパクトカメラである。
初代Tの特徴は、距離計連動式のマニュアルフォーカスだった。撮影者はファインダー内の二重像を合わせて距離を決める。フィルムの巻き上げも手動。ストロボは内蔵されておらず、専用の外付けストロボを頭に載せる構成だった。小型のボディに高性能な単焦点レンズを収めながら、撮影操作には多くの手動部分が残されていた。
デザインを担当したのは、ポルシェ・デザイングループである。当時のCONTAXは、ヤシカとカール・ツァイスの提携によって展開されていたブランドだった。両社の提携は1973年に始まり、1975年には一眼レフのCONTAX RTSが登場した。1983年10月、京セラがヤシカを吸収合併する。その翌年に発売された初代Tは、京セラのカメラ事業におけるCONTAXブランドの製品となった。
初代TからT2までの間隔は約6年で、その間にコンパクトカメラの自動化は進んだ。T2では、距離計連動式のマニュアルフォーカスが赤外アクティブAFへ変わり、ストロボが内蔵された。フィルムの巻き上げと巻き戻しも自動になった。
初代Tの操作をそのまま残した後継機ではない。38mm F2.8という基本的なレンズ仕様を受け継ぎながら、撮影の手順を大きく変えたカメラだった。ただし、絞りを選ぶ操作と、手動で距離を指定する機能は残された。すべてを自動化するのではなく、何を自動にし、何を撮影者に残すか。T2では、その境界が引き直されている。
6つのT2に、6つの仕上げ。
T2の標準仕様はチタンシルバーで、1990年の発売時定価は120,000円。翌1991年10月には、チタンブラックとチタンゴールドが追加された。定価はそれぞれ130,000円で、標準のチタンシルバーより10,000円高い。基本的なカメラの仕様は共通で、外装の仕上げによって違いが付けられた。
その後、T2にはさらに特別な仕様が登場する。CONTAX誕生60周年を記念したT2 Gold、プラチナ仕上げのT2 Platinum、そして1998年のT2 Limited Blackである。
この6仕様を並べると、T2が単なる撮影機材にとどまらず、外装や仕上げそのものを商品価値としていたことがわかる。60周年記念Goldの定価250,000円は、標準仕様の約2.08倍。レンズの焦点距離や基本的な撮影機能が大きく変わったわけではない。価格差の中心にあるのは、外装仕上げ、記念仕様、付属品、そして限定性である。
TIPS
同じゴールドでも、別のT2。
1991年に追加されたチタンゴールドと、1992年のCONTAX誕生60周年記念Goldは別仕様。後者は国内2,000台、海外4,000台の限定モデルとされる。中古品を探す際は、色だけでなく記念刻印や付属品も確認したい。
CONTAXというブランドの起点は、1932年に登場したツァイス・イコンのContax Iに置かれている。その60周年を記念したモデルが、1992年のT2 Goldだった。T2 Platinumも、通常モデルとは異なる外装仕上げや専用の付属品を持つ特別仕様である。1998年のLimited Blackでは、通常のチタンブラックとは異なる黒い塗装仕上げが採用された。
同じT2でありながら、外観はそれぞれ異なる。1990年代の高級コンパクトカメラが、撮影性能だけではなく、所有する道具としても評価されていたことを示す展開である。
高級コンパクトは、T2のあとに広がった。
T2は、高級コンパクトカメラを代表する機種として知られている。しかし、このジャンルがT2から突然始まったわけではない。小型でありながら高品質なレンズや金属製ボディを持つカメラは、それ以前から存在していた。1966年に登場したRollei 35は、その代表例である。1984年の初代CONTAX Tも、T2に先立つ高級コンパクトカメラだった。
T2の重要性は、こうした系譜を受け継ぎながら、オートフォーカスや自動巻き上げ、内蔵ストロボを組み合わせたことにある。高級な単焦点レンズを搭載していても、撮影の基本操作は一般的なコンパクトカメラに近い。その構成が、1990年代の高級コンパクトカメラ市場で存在感を持つようになった。
1993年にはニコン 35Tiが登場する。搭載レンズはニッコール35mm F2.8で、金属製ボディに特徴的なアナログ指針式の表示機構を組み合わせた。1996年にはミノルタ TC-1が登場し、Gロッコール28mm F3.5を搭載して、非常に小型のボディに高性能な広角レンズを収めた。同じ1996年にはリコー GR1も発売されている。GRレンズ28mm F2.8を搭載し、軽量なボディと広角レンズを組み合わせている。
この4機を並べると、画角の違いがはっきりする。T2の38mmに対して、35Tiは35mm、TC-1とGR1は28mm。後続の機種では、より広い画角のほうが選ばれている。
しかし、これは単純に新しいカメラほど優れているという話ではない。35mmと28mmでは、画面に入る範囲が異なる。レンズの構成も、ボディの寸法も、設計上の優先順位も変わる。T2は38mm F2.8という組み合わせを持ち、後続の機種はそれぞれ別の答えを出した。
この時代、高級コンパクトカメラは単一の形式に収束したのではない。レンズの画角、操作性、外装、携帯性をめぐって、異なる方向へ展開していったのである。そしてT2は、その時代を代表する機種のひとつになった。
11年後のT3が、手放したもの。
T2から約11年後の2001年、京セラはCONTAX T3を発売した。
レンズは、カール・ツァイス ゾナー T* 35mm F2.8で、構成は4群6枚。T2の38mm F2.8、4群5枚から、焦点距離もレンズ構成も変わった。最短撮影距離は0.7mから0.35mへ短縮され、T2では近づけなかった被写体にも、T3では寄れるようになった。
シャッターの最高速度は、T2の1/500秒からT3では1/1200秒へ引き上げられた。低速側も16秒まで拡張されている。
測距方式も変更された。T2の赤外アクティブAFに対して、T3は外部パッシブAFを採用した。自分で赤外線を投射する方式から、被写体の像を利用して距離を測る方式へ移ったのである。ただし、パッシブ方式になったからといって、ガラス越しの撮影で必ず正しい距離を測れるわけではない。ガラスの反射や被写体のコントラストなど、別の条件による測距の難しさは残る。
ボディも小さくなった。T2の119×66×33mmに対し、T3は105×63×30.5mm。質量は295gから230gへ、65g軽くなった。
T3では、近接撮影性能、シャッター速度、小型軽量化など、多くの部分が更新された。しかし、T2から引き継がれなかったものがある。38mmという焦点距離で、35mmへの変更によって画角は約4度広くなった。わずか3mmの違いだが、Tシリーズにとっては明確な変更だった。
初代TからT2へ受け継がれた38mm F2.8という組み合わせは、T3で終わった。T3はT2の単なる小型版ではなく、同じ高級コンパクトカメラという枠の中で別の設計を選んだ後継機だった。
38mmは、T2だけに残った。
T2には、1990年のコンパクトカメラに求められた機能が揃っている。オートフォーカス、内蔵ストロボ、自動巻き上げ、自動巻き戻し。フィルムを入れて構えれば、あとはシャッターを押すだけで写真が撮れる。
一方で、絞りはレンズの周囲に刻まれた数字から選び、ピントも必要なら手動で合わせられる。外装にはチタンが使われ、レリーズボタンやフィルム圧板にも、それぞれ異なる材料が選ばれた。そしてレンズは、38mm F2.8だった。
11年後に登場したT3は35mmを選び、最短撮影距離を半分に縮め、ボディを65g軽くした。新しい世代が性能を更新する一方で、T2の38mmは引き継がれなかった。
35mmでも40mmでもない、38mm。その数字を選んだ理由のすべてが、資料に残されているわけではない。ただ、1990年の京セラが38mmという焦点距離を採用し、そのレンズを中心に一台の高級コンパクトカメラを成立させたことは確かである。
38mmという数字は、CONTAX T2というカメラの中にだけ残った。